2011年06月04日
✦『源氏物語』に見る求婚の風光
『源氏物語』に見る求婚の風光
たくさんの個性ゆたかな、魅力あふれる女性のオン・パレードを見せてくれる『源氏物語』。求婚者の多さという点から見ると、玉鬘(たまかつら)ということになるでしょうか。玉鬘は光源氏がこよなく愛した女性の一人である夕顔の遺児です。ほんとうは光源氏の子どもではなく、恋において政治においてライバルの関係にある頭中将(とうのちゅうじょう)と夕顔とのあいだに生まれた子。母親に似てたいそうな美貌だったようです。

母親の夕顔ですが、物語全体のなかではそれほど存在感があるわけではありませんね。男のいいなりになってしまう自然体の女というか、どうも頼りなげな存在ですが、男の欲望をそそらずにはいない魅力的な容姿に加え、性愛じょうずとされ、源氏も頭中将もゾッコンでした。そうなると、周囲の女たちの嫉妬には恐ろしいものがあり、源氏の愛人とされながらあまり相手にしてもらっていない六条御息所(ろくじょうみやすんどころ)の怨霊に呪い殺されてしまいます。夕顔の19歳のときでした。とびきりの美貌で、優柔不断。まあ、好色男たちにはいちばんご都合よろしい女というわけで、身から出たのは、高雅な香りのたちのぼりではなく、サビというわけで、こんな命の閉じ方も仕方ないでしょうかね。さらにイイタマなことには、死にのぞんで娘の玉鬘の養育を源氏に託すというちゃっかりぶり。
さて、玉鬘。なんとも可愛らしいこの子、たいそうな物語好きなんですね。紫式部がこの可愛い幼女に対する源氏のことばを借りて物語観を述べる部分です。『竹取物語』がなぜ「ものがたり」の祖形なのか、そこはわたしたちにもおおいに勉強になりますね。その玉鬘、日ごとに成長して美しさを加えていきます。そうなると、さあさあ、たいへん、どっと求婚者が現われ、彼女の思いは千々に乱れます。なかには、乱暴者として聞こえた大夫監(たゆうのげん)という肥後の豪族がいます。ヘタに拒絶しようものなら何をされるかわかりません。それだけではありません。のちに女三の宮との密通でたいへんな事態を引き起こす柏木までも。この柏木、じつは玉鬘が自分の姉であることも知らないオタンチン。さらには源氏の弟の蛍兵部卿宮も、また有力な政治家ながら無骨者の鬚黒大将も。さらにやっかいなことには、源氏自身も。自分が養父であることを忘れて玉鬘に執拗に言い寄り、親子関係が危機に瀕します。
しかし、騒がしい男たちをよそに、玉鬘はなかなか慎重な女です。打算の人です。あれこれと己れの行く末にじっくりと思いをめぐらせます。なみいる貴公子たちから次つぎに届く恋文。彼女がそれに返信するのは、養父の弟の蛍兵部卿宮ただ一人。立場上からして欠かせぬ礼儀だったのでしょう。さあ、これで決まり! と思いきや、玉鬘がくだした最後の結論は、……なんとまあ、もっとも気が進まなかったはずの相手、鬚黒大将というわけ。う~ん、そんなもんでしょうかねぇ、賢い女の打算とは。
たくさんの個性ゆたかな、魅力あふれる女性のオン・パレードを見せてくれる『源氏物語』。求婚者の多さという点から見ると、玉鬘(たまかつら)ということになるでしょうか。玉鬘は光源氏がこよなく愛した女性の一人である夕顔の遺児です。ほんとうは光源氏の子どもではなく、恋において政治においてライバルの関係にある頭中将(とうのちゅうじょう)と夕顔とのあいだに生まれた子。母親に似てたいそうな美貌だったようです。
母親の夕顔ですが、物語全体のなかではそれほど存在感があるわけではありませんね。男のいいなりになってしまう自然体の女というか、どうも頼りなげな存在ですが、男の欲望をそそらずにはいない魅力的な容姿に加え、性愛じょうずとされ、源氏も頭中将もゾッコンでした。そうなると、周囲の女たちの嫉妬には恐ろしいものがあり、源氏の愛人とされながらあまり相手にしてもらっていない六条御息所(ろくじょうみやすんどころ)の怨霊に呪い殺されてしまいます。夕顔の19歳のときでした。とびきりの美貌で、優柔不断。まあ、好色男たちにはいちばんご都合よろしい女というわけで、身から出たのは、高雅な香りのたちのぼりではなく、サビというわけで、こんな命の閉じ方も仕方ないでしょうかね。さらにイイタマなことには、死にのぞんで娘の玉鬘の養育を源氏に託すというちゃっかりぶり。
さて、玉鬘。なんとも可愛らしいこの子、たいそうな物語好きなんですね。紫式部がこの可愛い幼女に対する源氏のことばを借りて物語観を述べる部分です。『竹取物語』がなぜ「ものがたり」の祖形なのか、そこはわたしたちにもおおいに勉強になりますね。その玉鬘、日ごとに成長して美しさを加えていきます。そうなると、さあさあ、たいへん、どっと求婚者が現われ、彼女の思いは千々に乱れます。なかには、乱暴者として聞こえた大夫監(たゆうのげん)という肥後の豪族がいます。ヘタに拒絶しようものなら何をされるかわかりません。それだけではありません。のちに女三の宮との密通でたいへんな事態を引き起こす柏木までも。この柏木、じつは玉鬘が自分の姉であることも知らないオタンチン。さらには源氏の弟の蛍兵部卿宮も、また有力な政治家ながら無骨者の鬚黒大将も。さらにやっかいなことには、源氏自身も。自分が養父であることを忘れて玉鬘に執拗に言い寄り、親子関係が危機に瀕します。
しかし、騒がしい男たちをよそに、玉鬘はなかなか慎重な女です。打算の人です。あれこれと己れの行く末にじっくりと思いをめぐらせます。なみいる貴公子たちから次つぎに届く恋文。彼女がそれに返信するのは、養父の弟の蛍兵部卿宮ただ一人。立場上からして欠かせぬ礼儀だったのでしょう。さあ、これで決まり! と思いきや、玉鬘がくだした最後の結論は、……なんとまあ、もっとも気が進まなかったはずの相手、鬚黒大将というわけ。う~ん、そんなもんでしょうかねぇ、賢い女の打算とは。
Posted by 〔がの〕さん at 18:05│Comments(0)
│日本古典文学