2016年08月20日

Aj/日本画が描く日本の女

✦日本画が描く日本の女
   
日本画が描く日本の女……といったら、あなたは
どんな画家の、どんな作品を想い浮かべますか。
喜多川歌麿、鈴木春信といった江戸期の浮世絵、ですか。
ま、そこまで遡らないところでは?
その気品に満ちた美しさで上村松園とその作品でしょうかね。
ええ、上村松園の描く女性もたいへん好きですが、
わたしにとって特別な思い入れがあるのは、森田曠平の描きだす女性です。
じつは、森田画伯が亡くなる1か月前、仕事の依頼でご自宅に訪ね、
一度だけお会いいたしました。ですが、当時、病床にあり、
仕事を受けていただける健康状態になく、もちろん断わられましたが。
しかし、それを機縁にこの人の作品にズンと魅せられ、以来、
あそこにある、こちらにあるとひとから聞けば、可能なかぎりで
近県のたくさんの美術館をめぐり歩きました、
ほんとうに憑りつかれたように。二十数年も前のことですが。
で、この夏、西伊豆のある老舗旅館の一室の床の間で、偶然、目にしたのがこれ。



一見してすぐ森田曠平画伯のものとわかりました。
個性的な色づかいと線、古代の神秘をたたえる独特な目の女。
シンプルながらキリリとした意志的な目。
和魂(わぎたま)が香りたつしなやかな姿態。いずれも
表情はごく抑えられて静的です。
詩的な風韻に包まれ、清雅で、存在が澄んでいます。
この旅館には、静岡県の生んだ人間国宝の
芹沢銈介(画家、染色家、民芸家)の作品が数点、
通路の壁面に飾られていることを、前回泊まったときに知 りました。
何気なく壁に掛けてあるという感じ。その無造作ぶりが気に入りました。
あるいは、フロントのうしろには、中島千波の大作「桜」があるなど、
ここのオーナーはなかなかの趣味人か、と思われました。
泉質のよい温泉、鮮度バツグンの魚介類を部屋食で楽しませてくれる
相模の青海原に面した、落ち着いた宿。将棋の名人戦がよくここでおこなわれているとか。
庭づくりもなかなかです。

森田作品との思いがけぬ邂逅といえば、もうひとつ、
富士急ハイランド(山梨県富士吉田市)の、いえいえ、あの絶叫マシーンではなく、
それに隣接する美術館「フジヤマミュージアム」。
富士山を題材にした古今の名画ばかりをこだわって集めた
個性的な美術館で、その一角で「かぐや姫」に出会ったのです。
“不死の山”(富士山)伝説をあらわす、なよたけのかぐや姫を描いた作。
かぐや姫のものがたりをモチーフにしたこの人の作品はほかにもあり、
そのいくつかは切手にもなっていましたね。



図録から複写した森田作品を以下に。

 「出雲阿国」

「砧」

「遊楽図」





  


Posted by 〔がの〕さん at 12:51Comments(0)美術鑑賞(国内)