2018年09月08日

JCL. 源氏物語の女たち⑩

読書メモ
源氏物語の女たち⑩

JCL. 源氏物語の女たち⑩


〔浮舟〕うきふね

*八の宮と中将の君とのあいだに生まれる。
*母の中将の君からはやさしい盲愛を受けるが、父の八の宮からはじつの娘として認知されなかった。
*八の宮の死後、母の中将の君は受領階級の常陸の介と再婚する。この継父は貴族的な教養や美意識に乏しく、幼くして浮舟は虐待を受ける。
*耐えがたい状態にあり、宇治から上京して匂宮と結婚している異母姉の中の君のもとに身を寄せる。
*ところが、その匂宮が接近して強引に迫り、やむなくここを出て川を隔てた三条の小屋に移り住む。
*匂宮の激しい愛欲に溺れる一方、薫のやさしく親切な愛情にも深く惹かれる。肉の恋とこころの恋とのあいだで引き裂かれ、にっちもさっちもいかぬ三角関係に苦しむ。思いきわまって入水。
*命は助けられたが、何もわからない記憶喪失に。のちに記憶を取り戻すが、それを機に世情の一切を捨てて出家、比叡山のふもとの小野の山里で尼になる。
*そこで、高徳の僧、横川の僧都と出会い、宗教的な師弟関係を結び、一途な仏教修行をつとめて生涯を閉じる。
*あちらの世界、こちらの世界を浮舟のように波のままに漂い、さまざまな人間模様のなかを苦しく漕ぎめぐりつつ自己を構築しようと試みるが、そのたびに失敗して終わる。「さすらいの女神」とされる、哀れにして悲しい女性、いや、もしかすると、矛盾と混乱を抱えつつ生きる人間のサガを、ほんとうに生きた女性かも知れない。

PS. 浮舟は「宇治十帖」のもっとも重要なヒロイン。向こう岸の家で繰り返される匂宮との3日間の濃密な愛戯、だれにも邪魔されることのない性愛の極みを体験。これによって女の官能の悦びを知るが、同時に、薫の清いストイックな愛を裏切るうしろめたさとのあいだでこころを翻弄されるという構図。わが国最初の物語「竹取物語」のかぐや姫がそうだったように、萬葉集で詠まれた真間の手児奈(てごな)がそうだったように、思いを千々に引き裂かれるのは、人並みはずれて美しく生まれついた女性の悲しい宿命か。
「源氏物語の女たち」はこれにて終わりといたします。

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Posted by 〔がの〕さん at 10:04│Comments(0)日本古典文学
 
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