2015年07月14日

C/松谷みよ子〔6〕

松谷みよ子
松谷文学の三つのタイプ
<小夜の “いっしょに、おはなし!”>


松谷みよ子さんはたいへん多才な人で、その作品は大きくは三つのタイプがあるように思います。ひとつは、『龍の子太郎』『まえがみ太郎』『ちびっこ太郎』『おしになった娘』などの民話を再創造したもの。ふたつめには、ここでご紹介してきた『ふたりのイーダ』『死の国からのバトン』『屋根裏部屋の秘密』『あの世からの火』などの、戦争の不条理や公害を告発するもの。

C/松谷みよ子〔6〕

そして三つめがやさしい母性を注いだ作品。名古屋のSCKさんが挙げてくださったモモちゃんシリーズがありますし、『貝になった子ども』といった傑作、またHRM先生が挙げてくださった『いないいないばあ』や、『おふろでちゃぷちゃぷ』、小夜がいちばん好きな『いいおかお』などのファースト・ブック(赤ちゃん絵本)。身近なものたちへのプレゼントとして書いた作品のようでして、ほんとうにとってもとっても暖かいですね。小夜はこのタイプの作品が大好きで、何度も何度も読みました。

C/松谷みよ子〔6〕

小夜は、きょう、『死の国からのバトン』を読み終えました。“直樹とゆう子の物語”シリーズのひとつです。飢饉による村の困苦難儀を救おうとして江戸に出て直訴、その結果、首をはねられたて不業の死をとげた15歳の直七というコドモセンゾに導かれ、小6の直樹くんが、雪深い山形の奥にある村の、死者の霊の集まる阿陀野の山に入り、公害の元凶を探るというもの。これも、怖いほどすごい作品です。AF2という防腐剤。これのはいったお豆腐を食べた若い姉妹の狂い死に、その近くで獲れた魚を食べたネコが奇妙なおどりをはじめ、そして狂い死にしていきます。死んでからも水路を見まわる直右衛門(じきえもん)じいのこと、鳥追い、百万遍の供養といった村に伝わる習俗のこと、などなど。
山のばばさというふしぎな存在が直樹に語ります、「ただ愚かしゅうてまちごうたということなら、それはまだ許されるのや。人間の賢さが、こざかしさとなってあらわれたとき、そのおごりたかぶる心、おそれを知らぬ心が、おそろしい結末を生むのや」。人は自分が「間違いでした」とはなかなか言わないものですね。人間の生ま半可な知識と、振り返ることを知らない傲慢が、取り返しのつかない泥沼へ周囲の人びとを引き込んでしまう恐ろしさ。
この作品でも、目を逸らせてはいけないテーマをまっすぐわたしたちの前に突き出しています。中国や朝鮮、アジアの人びとが日本に向けていう「歴史認識」にかかわる部分とともに、若い世代と大事に対話しつつ読みたい作品ですね。

C/松谷みよ子〔6〕




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Posted by 〔がの〕さん at 18:53│Comments(0)児童文学
 
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