2018年07月29日
JCL. 源氏物語の女たち⑨
読書メモ
源氏物語の女たち⑨

〔玉鬘〕たまかずら
*夕顔の遺児
*夕顔のおもかげをとどめ、美貌にして聡明、光を放つ玉藻のイメージをもつ女性。
*実の父親は頭中将。夕顔の亡くなったあと、乳母とともに筑紫へ。そこで20歳までを過ごす。
*のちに源氏の養女として六条院に引き取られ、花散里のもとにあずけられる。
*物語が好きで、この段で源氏のことばを借りて作者・紫式部の物語観、文学観が語られる段。
*多くの求婚者があり、玉鬘は千々の思いに悩まされる。
・肥後の豪族・大夫監(たゆうのげん)…乱暴者で、断ると何をされるかわからない怖さをもつ。
・柏木…玉鬘を自分の姉とも知らず恋い慕う弟
・蛍兵部卿宮…源氏の異母弟
・鬚黒右大将…有力な政治家
・光源氏…養父であることを忘れたかのように玉鬘に節度なく言い寄る。親子関係の破廉恥な危機。
*聡明にして慎重な玉鬘、打算の女性でもあり、次つぎに現われる求婚者を前にして、
己れの行く末に思いをめぐらせ悩む。(わが国の最古の物語「竹取物語」に類例を見る)
*多くの貴公子から恋文が届けられるが、玉鬘が返事を返したのは、
養父とかかわりの深い蛍兵部卿宮ただ一人。
*結果や如何に? 皮肉というか、悩み迷った末の結果とは、これが現実か。
並み居る求婚者のうちでもっともありえない、もっとも気のすすまなかった相手、鬚黒大将だった。
*先にやった者の勝ち、まったくのレイプによるものだった。
*黒鬚大将ののこした先妻の子の継母となる傍ら、玉鬘も二人の男の子を産む。
*最後には太政大臣の北の方にまでのぼるが、やがて黒鬚大将の死とともに苦境に追いやられる。
*終生、迷いとさすらいを宿命づけられたヒロイン。

「源氏物語の女たち」シリーズを9回お届けしてきましたが、
宇治十帖〔橋姫、椎本(しいがもと))、総角(あげまき)、早蕨、宿木、東屋、蜻蛉、手習い、夢浮橋〕
には触れず、次回の10回、浮舟をもって終わりにしたいと思います。
源氏物語の女たち⑨

〔玉鬘〕たまかずら
*夕顔の遺児
*夕顔のおもかげをとどめ、美貌にして聡明、光を放つ玉藻のイメージをもつ女性。
*実の父親は頭中将。夕顔の亡くなったあと、乳母とともに筑紫へ。そこで20歳までを過ごす。
*のちに源氏の養女として六条院に引き取られ、花散里のもとにあずけられる。
*物語が好きで、この段で源氏のことばを借りて作者・紫式部の物語観、文学観が語られる段。
*多くの求婚者があり、玉鬘は千々の思いに悩まされる。
・肥後の豪族・大夫監(たゆうのげん)…乱暴者で、断ると何をされるかわからない怖さをもつ。
・柏木…玉鬘を自分の姉とも知らず恋い慕う弟
・蛍兵部卿宮…源氏の異母弟
・鬚黒右大将…有力な政治家
・光源氏…養父であることを忘れたかのように玉鬘に節度なく言い寄る。親子関係の破廉恥な危機。
*聡明にして慎重な玉鬘、打算の女性でもあり、次つぎに現われる求婚者を前にして、
己れの行く末に思いをめぐらせ悩む。(わが国の最古の物語「竹取物語」に類例を見る)
*多くの貴公子から恋文が届けられるが、玉鬘が返事を返したのは、
養父とかかわりの深い蛍兵部卿宮ただ一人。
*結果や如何に? 皮肉というか、悩み迷った末の結果とは、これが現実か。
並み居る求婚者のうちでもっともありえない、もっとも気のすすまなかった相手、鬚黒大将だった。
*先にやった者の勝ち、まったくのレイプによるものだった。
*黒鬚大将ののこした先妻の子の継母となる傍ら、玉鬘も二人の男の子を産む。
*最後には太政大臣の北の方にまでのぼるが、やがて黒鬚大将の死とともに苦境に追いやられる。
*終生、迷いとさすらいを宿命づけられたヒロイン。

「源氏物語の女たち」シリーズを9回お届けしてきましたが、
宇治十帖〔橋姫、椎本(しいがもと))、総角(あげまき)、早蕨、宿木、東屋、蜻蛉、手習い、夢浮橋〕
には触れず、次回の10回、浮舟をもって終わりにしたいと思います。
2018年06月06日
JCL. 源氏物語の女たち⑧
読書メモ
源氏物語の女たち⑧

〔朝顔〕
*桃園式部卿の姫君で桐壺帝の姪にあたる。
*紫の上、明石の君、花散里などより身分ははるかに上で、高いプライドを持っていた。
*世間という常識的な視野からは外れた女性。
*浮いた雰囲気を嫌い、性格も着るものも地味。身持ちの堅さは空蝉以上か。
*14歳のとき24歳の源氏に出会うが、
*源氏の周辺にいる女たちを冷静に見ていて(六条御息所の悶死、正妻葵の上の早逝、ともに嫉妬と憎悪の苦しみのうちに死した)、その二の舞はしないと警戒を怠らず、頑なに源氏を拒みつづけた。
*色好みの男に振り回される愚を嫌って拒否しつづけ、終生、源氏を受け入れることはなかった。
*冷静な目を持ち、色や恋とは無縁の清い環境にあるうち、世俗的なものへの関心はなく、身を清めつつ生きる日々へ。生涯、賀茂の斎院としてつとめる。
☆
Cf. : ・高位にある女性の呼びかた 中宮⇒女御⇒更衣
・源氏の後半生に影響を落とした女性で、地位や名声をもってしても意のままにならぬことがある、との自覚を呼び覚ます。源氏の後半生のわびしい孤独と虚無の世界へのターニングポイントだったか。

〔朧月夜〕
*源氏にとっては政敵になる右大臣家の令嬢(六の君)であり、弘徽殿の太后の妹にあたる名門の姫君。
*左大臣の娘の葵の上へのはげしい対抗心を抱いていた。
*朱雀帝が寵愛する女御で、その寵愛を一身に受けていた。
*生来の育ちのよさから、明るく闊達で、何ごとにも物怖じしない性格。
*屈託なく、美しい楽しい女性ながら、軽率で配慮を欠くことも少なくない。
*大胆な行動力とやんちゃさがあり、恋にはたいへん奔放で積極的。官能的でありふしだらささえ感じさせる一面も。
*あるとき、その朧月夜、おこりの病いを患い、養生のため里帰りしていた。
*帝の寵妃である朧月夜を、源氏が情熱に任せて寝取るという罪が、そのとき犯された。
*源氏にしてみれば、桐壺院には死なれ、藤壺には出家され、独り残された寂しさに半ばヤケクソになっていた時期、堕落願望に陥っていて、失望と虚脱感を埋め合わせるための密かな愛の吐露だった。
*包容力もあり、ときにはマイペースの積極さで源氏をリードしていた朧月夜。
*それが危険な罠だったことに気づかず、雷鳴のとどろく夜、その密会は、こともあろうに政敵の右大臣の前に露見してしまい、一大事に。
*結果、源氏は一切の官位を剥奪され、謹慎の身として須磨・明石への流謫の罪を負う。
*父親の右大臣には、帝の寵妃を源氏に犯させた帝に対する不忠、監督不行き届きの咎の罰が下される。
☆
Cf. ・露見したその不始末は弘徽殿の太后(帝の生母)の逆鱗にふれ、源氏27歳は都を追放され、須磨に流罪、隠棲することに(須磨流謫)。孤独の寂しさから明石の入道に近づき、やがて「明石の君」への展開へ。
源氏物語の女たち⑧

〔朝顔〕
*桃園式部卿の姫君で桐壺帝の姪にあたる。
*紫の上、明石の君、花散里などより身分ははるかに上で、高いプライドを持っていた。
*世間という常識的な視野からは外れた女性。
*浮いた雰囲気を嫌い、性格も着るものも地味。身持ちの堅さは空蝉以上か。
*14歳のとき24歳の源氏に出会うが、
*源氏の周辺にいる女たちを冷静に見ていて(六条御息所の悶死、正妻葵の上の早逝、ともに嫉妬と憎悪の苦しみのうちに死した)、その二の舞はしないと警戒を怠らず、頑なに源氏を拒みつづけた。
*色好みの男に振り回される愚を嫌って拒否しつづけ、終生、源氏を受け入れることはなかった。
*冷静な目を持ち、色や恋とは無縁の清い環境にあるうち、世俗的なものへの関心はなく、身を清めつつ生きる日々へ。生涯、賀茂の斎院としてつとめる。
☆
Cf. : ・高位にある女性の呼びかた 中宮⇒女御⇒更衣
・源氏の後半生に影響を落とした女性で、地位や名声をもってしても意のままにならぬことがある、との自覚を呼び覚ます。源氏の後半生のわびしい孤独と虚無の世界へのターニングポイントだったか。

〔朧月夜〕
*源氏にとっては政敵になる右大臣家の令嬢(六の君)であり、弘徽殿の太后の妹にあたる名門の姫君。
*左大臣の娘の葵の上へのはげしい対抗心を抱いていた。
*朱雀帝が寵愛する女御で、その寵愛を一身に受けていた。
*生来の育ちのよさから、明るく闊達で、何ごとにも物怖じしない性格。
*屈託なく、美しい楽しい女性ながら、軽率で配慮を欠くことも少なくない。
*大胆な行動力とやんちゃさがあり、恋にはたいへん奔放で積極的。官能的でありふしだらささえ感じさせる一面も。
*あるとき、その朧月夜、おこりの病いを患い、養生のため里帰りしていた。
*帝の寵妃である朧月夜を、源氏が情熱に任せて寝取るという罪が、そのとき犯された。
*源氏にしてみれば、桐壺院には死なれ、藤壺には出家され、独り残された寂しさに半ばヤケクソになっていた時期、堕落願望に陥っていて、失望と虚脱感を埋め合わせるための密かな愛の吐露だった。
*包容力もあり、ときにはマイペースの積極さで源氏をリードしていた朧月夜。
*それが危険な罠だったことに気づかず、雷鳴のとどろく夜、その密会は、こともあろうに政敵の右大臣の前に露見してしまい、一大事に。
*結果、源氏は一切の官位を剥奪され、謹慎の身として須磨・明石への流謫の罪を負う。
*父親の右大臣には、帝の寵妃を源氏に犯させた帝に対する不忠、監督不行き届きの咎の罰が下される。
☆
Cf. ・露見したその不始末は弘徽殿の太后(帝の生母)の逆鱗にふれ、源氏27歳は都を追放され、須磨に流罪、隠棲することに(須磨流謫)。孤独の寂しさから明石の入道に近づき、やがて「明石の君」への展開へ。
2018年05月04日
JCL. 源氏物語の女たち⑦
読書メモ
源氏物語の女たち⑦

〔明石の君〕
*父の明石入道はこの地の受領(ずりょう 県知事)。娘によって一門の繁栄をとの宿願をもって、源氏に接近する。
*流謫の身にある源氏、27歳。
*須磨を襲った大暴風雨。源氏は明石入道に助けられ、須磨を捨てて明石入道の邸に入る。
*娘は、格別な美人ではないが、上品で聡明、教養も趣味も高く、とりわけ琵琶を得意とする。
*誇り高く強情な一面も。なかなかなびかないが、流謫の寂しさもあって、源氏は次第にこの女性にのめりこんでいく。
*明石入道の思惑どおり、娘は源氏に娶せられる。
*源氏29歳、明石の君19歳とのあいだに一子「明石の女御」(明石の姫君)をなす。
*のちにこの明石の女御は六条院に入り、その養育は紫の上に託される。
☆
Cf. : 源氏は、2年5か月の配流ののち、朱雀院に許されて都へ戻る。懐妊から1か月の後のこと。29歳、内大臣として復帰する。
六条院へ入ったのは、明石の君22歳、姫君3歳の冬のことだった。

〔女三の宮〕
*源氏の兄にあたる朱雀院の第三皇女。母は藤壺女御。先の帝の姫君であり、源氏が生涯を通じて憧れた藤壺中宮の姪になる。
*なよなよとして主体性なく、深窓の令嬢的。
*朱雀帝は朧月夜のことで源氏に煮え湯を浴びせられたが、この際、後見人となって源氏に懇請してこの姫を降嫁させる。
*14歳の姫とすでに老境にある40歳の源氏。26歳の年齢差があり、源氏にとって相手は幼なすぎ、満足な性愛が得られず、子も生まれない。
*この結婚は紫の上を苦しめることになる。懊悩の末、死にまで追いやってしまうことになるが、この姫にしてみれば、仕組まれた結婚の被害者、本人には一片の悪意もなかった。
*その間に、若い男とのあいだに不義密通が。
*紫の上の発病で、養生のため源氏は六条院から二条院へ移って看病にあたる。背徳はその留守のあいだに。
*柏木(頭中将の嫡男)との不義密通。のちに薫を生む。
*柏木が不用意に置いていった手紙が源氏の目にとまり不義は発覚する。
*源氏には、父の寵愛する藤壺と関係して子をなした経緯があり、手痛い因果応報となる。“もののあはれ”の極み。
*柏木は、源氏の目を恐れ、恐怖に駆られた揚げ句に重篤な病いを得、床に就く身となる。
*女三の宮は、剃髪して出家、23歳にしてこの俗世と別れる。
*これを聞いて柏木も泡が消えるように死ぬ。
☆
Cf. 紫の上を喪ったあとの源氏はほとんどもぬけの殻のような状態。親子ほども年齢差のある女性を求めて虚ろに彷徨う老人のすがた。秋好中宮(六条御息所の娘)、玉鬘(夕顔の遺児)、女三の宮=14歳
柏木31~32歳、女三の宮21~22歳の「一夜孕み」による妊娠。源氏は50歳近くになっていた。
源氏物語の女たち⑦

〔明石の君〕
*父の明石入道はこの地の受領(ずりょう 県知事)。娘によって一門の繁栄をとの宿願をもって、源氏に接近する。
*流謫の身にある源氏、27歳。
*須磨を襲った大暴風雨。源氏は明石入道に助けられ、須磨を捨てて明石入道の邸に入る。
*娘は、格別な美人ではないが、上品で聡明、教養も趣味も高く、とりわけ琵琶を得意とする。
*誇り高く強情な一面も。なかなかなびかないが、流謫の寂しさもあって、源氏は次第にこの女性にのめりこんでいく。
*明石入道の思惑どおり、娘は源氏に娶せられる。
*源氏29歳、明石の君19歳とのあいだに一子「明石の女御」(明石の姫君)をなす。
*のちにこの明石の女御は六条院に入り、その養育は紫の上に託される。
☆
Cf. : 源氏は、2年5か月の配流ののち、朱雀院に許されて都へ戻る。懐妊から1か月の後のこと。29歳、内大臣として復帰する。
六条院へ入ったのは、明石の君22歳、姫君3歳の冬のことだった。

〔女三の宮〕
*源氏の兄にあたる朱雀院の第三皇女。母は藤壺女御。先の帝の姫君であり、源氏が生涯を通じて憧れた藤壺中宮の姪になる。
*なよなよとして主体性なく、深窓の令嬢的。
*朱雀帝は朧月夜のことで源氏に煮え湯を浴びせられたが、この際、後見人となって源氏に懇請してこの姫を降嫁させる。
*14歳の姫とすでに老境にある40歳の源氏。26歳の年齢差があり、源氏にとって相手は幼なすぎ、満足な性愛が得られず、子も生まれない。
*この結婚は紫の上を苦しめることになる。懊悩の末、死にまで追いやってしまうことになるが、この姫にしてみれば、仕組まれた結婚の被害者、本人には一片の悪意もなかった。
*その間に、若い男とのあいだに不義密通が。
*紫の上の発病で、養生のため源氏は六条院から二条院へ移って看病にあたる。背徳はその留守のあいだに。
*柏木(頭中将の嫡男)との不義密通。のちに薫を生む。
*柏木が不用意に置いていった手紙が源氏の目にとまり不義は発覚する。
*源氏には、父の寵愛する藤壺と関係して子をなした経緯があり、手痛い因果応報となる。“もののあはれ”の極み。
*柏木は、源氏の目を恐れ、恐怖に駆られた揚げ句に重篤な病いを得、床に就く身となる。
*女三の宮は、剃髪して出家、23歳にしてこの俗世と別れる。
*これを聞いて柏木も泡が消えるように死ぬ。
☆
Cf. 紫の上を喪ったあとの源氏はほとんどもぬけの殻のような状態。親子ほども年齢差のある女性を求めて虚ろに彷徨う老人のすがた。秋好中宮(六条御息所の娘)、玉鬘(夕顔の遺児)、女三の宮=14歳
柏木31~32歳、女三の宮21~22歳の「一夜孕み」による妊娠。源氏は50歳近くになっていた。