F/ローラ・インガルス・ワイルダー 大きな森の小さな家
ローラ・インガルス・ワイルダー大きな森の小さな家
Laura Ingalls Wilder(1867~1957)
アメリカ児童文学の傑作「小さな家」シリーズ
作者はアメリカのウィスコンシン州ペピンの開拓農家に1867年に生まれる(1957年歿)。西部へ、西部へと 人びとがあこがれて動く時代。一家はインディアナ州、サウスダコタ州、フロリダ州、ミズーリィ州、カンザス州、ミネソタ州などと移り住みながら、大自然を友とする開拓生活をする。
ローラ65歳のとき、かつて父親から聞いた話や自身の体験をもとに、1932年『大きな森の小さな家』をあらわす。1870~80年代のアメリカの古き時代の物語で、家族とは何か、生きる喜びとは何かを、愛情深く描いて世界に大きな反響を得た。
以後、その生い立ちや一家が出会ったさまざまな出来事を、娘のローズの助力を得ながら書いて次つぎに発表。アメリカの歴史のうえでたいへん重要な開拓時代を、生活者の視点から書いた作である。第一作の『大きな森の小さな家』から第九作となる『はじめの4年間』へと書き継ぎ、さらに番外編に『わが家への道――ローラの旅日記』や『遥かなる草原』がある。いずれも作者の自伝であり、開拓農民の過酷な、しかし明るい希望に満ちた家族の記録でもある。
一家の家族愛で貫く開拓生活
「小さな家」シリーズの第一作『大きな森の小さな家』は作者ローラ・インガルス・ワイルダーの65歳のときに書かれた作。アメリカの文学史を通じて、マーク・トウェンの『トム・ソーヤの冒険』やルイザ・メイ・オルコットの『若草物語』とならぶ児童文学の傑作とされる。物語は、深い森のなか、大自然のさまざまな脅威にさらされながら、丸太づくりの小さな家で、屈するとなく、家族で助け合い、いたわり合いながら自分たちの生活を築いていく開拓者のすがたを、5歳の少女ローラの目をとおして描いていく。どんなときにも前向きで、明るく積極的に生きる家族像。
住んでいるのはウィスコンシン州の、見渡すかぎり木立ちという深い森のなか。そこにつくられた丸太小屋。クマやオオカミ、シカやヒョウ、キツネ、ヤマネコ、ジャコウネズミ、ミンクやイタチなどといった野生の動物もいる。ローラの家族は、父チャールズと母キャロライン、姉メアリーと赤ん坊のキャリー。このインガルス一家の、つつましいながら、あたたかい家族愛につつまれた自伝的な物語であり、すべてが自給自足、何から何まで手づくりの、当時の開拓農民の生活を描き出していく。
シリーズの他の作品には、『大草原の小さな家』『プラム・クリークの土手で』『シルバー・クリークの岸辺で』『農場の少年』『長い冬』『大草原の小さな町』『この楽しい日々』『はじめの四年間』がある。
☆
さらに世代は替わり、この物語は引き継がれていきます。「小さな家」シリーズの著者ローラ・インガルス・ワイルダーの娘のローズ・ワイルダー・レインは81歳で亡くなりますが、そのただひとりの後継者、養子のロジャー・リー・マクブライトが、ていねいにローズから聞き書きし、膨大な資料をもとに、ローズの7歳のときの開拓農民生活を忠実に物語化した「新大草原の小さな家」シリーズが刊行された。訳者の谷口由美子さんから贈っていただいたシリーズの1、『ロッキーリッジの小さな家』を、最近、改めて読み、こころをあたたかくし、なつかしさに浸った。
旱魃のサウスダコタのデスメットを捨てて、親子3人はゆたかな水を求めてミズーリィ川に沿って南下、ネブラスカ、カンザス、そしてミズーリィのオウザーク丘陵へいたる苦難に満ちた馬車の旅。この作では、ローザを中心にした家族愛のほか、近隣(といっても、ずう~っと離れて生活する人同士の)の人たちと助け合いながらつくり出していく農場生活がいきいきと描かれている。なお、このシリーズの2、「オウザークの小さな農場」も好評。
関連記事