読書メモ
源氏物語の女たち⑧
〔朝顔〕
*桃園式部卿の姫君で桐壺帝の姪にあたる。
*紫の上、明石の君、花散里などより身分ははるかに上で、高いプライドを持っていた。
*世間という常識的な視野からは外れた女性。
*浮いた雰囲気を嫌い、性格も着るものも地味。身持ちの堅さは空蝉以上か。
*14歳のとき24歳の源氏に出会うが、
*源氏の周辺にいる女たちを冷静に見ていて(六条御息所の悶死、正妻葵の上の早逝、ともに嫉妬と憎悪の苦しみのうちに死した)、その二の舞はしないと警戒を怠らず、頑なに源氏を拒みつづけた。
*色好みの男に振り回される愚を嫌って拒否しつづけ、終生、源氏を受け入れることはなかった。
*冷静な目を持ち、色や恋とは無縁の清い環境にあるうち、世俗的なものへの関心はなく、身を清めつつ生きる日々へ。生涯、賀茂の斎院としてつとめる。
☆
Cf. : ・高位にある女性の呼びかた 中宮⇒女御⇒更衣
・源氏の後半生に影響を落とした女性で、地位や名声をもってしても意のままにならぬことがある、との自覚を呼び覚ます。源氏の後半生のわびしい孤独と虚無の世界へのターニングポイントだったか。
〔朧月夜〕
*源氏にとっては政敵になる右大臣家の令嬢(六の君)であり、弘徽殿の太后の妹にあたる名門の姫君。
*左大臣の娘の葵の上へのはげしい対抗心を抱いていた。
*朱雀帝が寵愛する女御で、その寵愛を一身に受けていた。
*生来の育ちのよさから、明るく闊達で、何ごとにも物怖じしない性格。
*屈託なく、美しい楽しい女性ながら、軽率で配慮を欠くことも少なくない。
*大胆な行動力とやんちゃさがあり、恋にはたいへん奔放で積極的。官能的でありふしだらささえ感じさせる一面も。
*あるとき、その朧月夜、おこりの病いを患い、養生のため里帰りしていた。
*帝の寵妃である朧月夜を、源氏が情熱に任せて寝取るという罪が、そのとき犯された。
*源氏にしてみれば、桐壺院には死なれ、藤壺には出家され、独り残された寂しさに半ばヤケクソになっていた時期、堕落願望に陥っていて、失望と虚脱感を埋め合わせるための密かな愛の吐露だった。
*包容力もあり、ときにはマイペースの積極さで源氏をリードしていた朧月夜。
*それが危険な罠だったことに気づかず、雷鳴のとどろく夜、その密会は、こともあろうに政敵の右大臣の前に露見してしまい、一大事に。
*結果、源氏は一切の官位を剥奪され、謹慎の身として須磨・明石への流謫の罪を負う。
*父親の右大臣には、帝の寵妃を源氏に犯させた帝に対する不忠、監督不行き届きの咎の罰が下される。
☆
Cf. ・露見したその不始末は弘徽殿の太后(帝の生母)の逆鱗にふれ、源氏27歳は都を追放され、須磨に流罪、隠棲することに(須磨流謫)。孤独の寂しさから明石の入道に近づき、やがて「明石の君」への展開へ。