2023年12月25日

F/静かなるドン ショーロホフ

静かなるドン M.ショーロホフ

F/静かなるドン ショーロホフ


トルストイにつながるロシア文学の伝統を継ぐ
ソビエト文学を代表する作

1924年、「ほくろ」で文壇にデビュー、つづ2て短篇集「ドン物語」や「ルリ色の曠野」を発表して作家としての地位を確立した。1925年、モスクワから南ロシアのウクライナのドン川河畔のコサックの村に帰郷して創作活動に専念。このころから4部作からなる大長編小説「静かなるドンТихий Дон」を書き始める。第一部の発刊は1928年、1940年に書きあげて刊行した。ロシア革命の前後を背景にコサック社会の移り変わりを雄大なスケールで描いたショーロホフの代表作で、この作品により1941年のスターリン賞、1965年のノーベル文学賞を受けるなど、世界的な名声を博すことになる。 
ミハイル・ショーロホフ、1905~1984 ウクライナの小村ビョーンシェンスカヤに生まれる。商人の家庭で、母は農民、父は中流階級の出身。15世紀以来、自治と自由の精神を守りつづけてきたコサック社会の伝統に強い影響を受けて育った。中学校在学時にロシア革命(1917年)が起き、赤衛軍に参加した。革命委員会の食糧調達係としてドン地方各地を転戦、その体験が作家の素養を育てたと言えよう。1923年、モスクワに出て、石工や人夫など苛酷な肉体労働をしながら、若手プロレタリア作家のグループに入って文学を学んだ。

F/静かなるドン ショーロホフ


物語は主として中農のコサックのメルホフ家を中心に展開する。メルホフ家の次男グレゴリーは平穏な代わり映えのない部落生活に飽き足らず、隣家の主婦アクシーニャと出奔したが、貴族の館で下男として働くつらい毎日。第一次世界大戦がはじまるとその前線に送られ、戦闘の残虐さを目の前にして衝撃を受ける。そんなとき、戦友のひとりから新しい社会主義思想を吹き込まれる。一時、赤軍の身を投じ、士官にまで出世するが、以降、反革命隊や白衛軍、またコサックの世論とのあいだで翻弄される。その他さまざまな話が複雑に絡まりあって物語は大河的に展開する。そんななか、ドン地方の風景や風俗がていねいに描写され、とりわけドン川を挟んでコサックが対峙するなど、この川の存在感が印象的である。
第一巻では、第一次世界大戦直前のなごやかなコサックの平和な時代が、第二巻では、大戦中のコサックたちのさまざまな体験や伝統的な考え方が、第三巻では、国内戦の時代、コサックを二分するドン地方の深刻な災厄の状況が、第四巻では、国内戦末期のコサックたちの変容ぶりが描かれる。

この長編大作と並んで、これも長編「開かれた処女地Поднятая целина」を書く。第一部を21932年に発表、第二次世界大戦中の中断をはさんで第二部は1960年に完成した。コルホーズとして農業の集団化政策を実施していくなかでさまざまな矛盾や困難をはらんで進行する1960年代の農村の改造を主題とする作品。その他「人間の運命」「子馬」などの好篇もある。
第二次世界大戦中は従軍記者として前線に立ち、プラウダ紙などに多数のルポルタージュを発表。さらには、ナチスの残虐さを描いた短篇「憎しみの科学」を発表して衆目された。1937年、最高会議代議員に選ばれ、1939からはソ連科学アカデミーの会員として活躍した。

ロシアによる侵攻で苦難を強いられているウクライナの人びとの現在を思い、この時期にこの作を紹介した。かつてのあの牧歌的な日々が彼らに戻りますように・・・。


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Posted by 〔がの〕さん at 14:14│Comments(0)名作鑑賞〔海外〕
 
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